スーツのポケットのフタは出す出さない?室内外のマナーと理由を徹底解説

スーツのポケットのフタは出す出さない?室内外のマナーと理由を徹底解説

スーツのポケットのフタは出す出さない?室内外のマナーと理由を徹底解説の具体的な内容に迫る! 専門的な視点で紐解きます。

スーツの腰ポケットに備え付けられているフタは、服飾用語で「フラップ(Flap)」と呼ばれます。このフラップの取り扱いに関する基本原則は極めて明快であり、「屋外では外に出し、室内ではポケットの中にしまう」という使い分けが国際的なスタンダードです。

なぜ場所によってフタを出したりしまったりするのか。その決定的な理由は、フラップが誕生した歴史的背景と本来の機能にあります。フラップの日本語訳は「雨蓋(あまぶた)」です。19世紀の英国において、紳士服が乗馬や狩猟といった屋外活動のアウトドアウェアとして着用されていた時代、雨滴や泥、ホコリや小枝などがポケットの内部に入り込むのを防ぐ目的で考案されました。

つまり、フラップは過酷な屋外環境から衣服を守るための「レインガード(泥よけ・雨よけ)」として設計された実用パーツです。したがって、天候の影響を受ける屋外を歩く際にはフラップを外に出すのが自然な理屈となります。一方で、風雨の心配がない室内に入った後は、泥よけとしての役割が不要になります。そればかりか、室内でフラップを外に出したまま過ごす行為は、服飾の伝統において「外のホコリや汚れを部屋の中に持ち込む」「雨具を着たまま室内に居座る」という無骨で非礼なニュアンスを暗に帯びてしまいます。

実際に、夜間の最高格とされる正礼装「タキシード」や「燕尾服」には、最初からフラップが存在しないノーフラップ仕様(玉縁ポケット)が採用されています。室内専用のパーティーウェアとして発展した衣服には、屋外用の雨蓋を取り付ける必然性がないためです。ビジネススーツにおける「室内=フラップをしまう」というマナーは、こうした貴族社会から続く室内服のドレッシーな美意識を今に継承した結果といえます。

渡辺 美咲
著者

渡辺 美咲

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。