ボウリングの解説本やネット記事で頻繁に見かける「ボールの重さは体重の10分の1が最適」というフレーズ。たとえば体重70kgの成人男性なら15ポンド(約6.8kg)、体重50kgの女性なら11ポンド(約5.0kg)を選ぶ計算になります。しかし、ボウリング場でラックからその重さのハウスボールを取り出して投球した瞬間、多くの人が「重すぎて振れない」「ボールを落としそうになる」という強い違和感を覚えます。
この齟齬が生まれる最大の原因は、ハウスボールとマイボールの重さの違いではなく、指穴の構造差による支持力の違いにあります。マイボールは投球者の親指の太さ、関節の太さ、中指・薬指までのスパン(距離)、指の曲がり角度(ピッチ)を1ミリ以下の単位で計測し、指の形に合わせてドリル加工されています。そのため、握力をほとんど使わずに親指を軽く差し込むだけで、スイング中にボールが手の中にピタリと吸着し、最下点で遠心力によって自然に抜ける構造になっています。
一方、不特定多数が利用するハウスボールは、誰の指でも入るように穴が極端に大きく、指と穴の間に指一本分ほどの隙間が生じます。この構造で重いボールを振ろうとすると、ボールが遠心力で落下しないよう、前腕の筋肉を総動員して指先を曲げ「わしづかみ」にするしかありません。このとき手首にかかるモーメント負荷は、マイボールの3倍以上に達します。「体重の10分の1」という計算式は、プロショップで指穴をオーダーメイドすることが前提の基準であり、万人向けのハウスボールにそのまま当てはめるのは力学的に明らかな破綻を招くのです。