太ももの付け根にある「大転子(だいてんし)」とは、大腿骨の上端、骨盤の寛骨臼(かんこつきゅう)にはまり込む骨頭のすぐ外側に位置する大きな骨の突起部を指します。本来、大転子は殿筋群をはじめとする多くの重要筋肉が付着する自然な骨のランドマークであり、誰にでも存在する構造です。それにもかかわらず、なぜ「出すぎている」と感じるほど外側へ張り出してしまうのでしょうか。
決定的な要因は、大腿骨の「内旋(ないせん:内側へのねじれ)」にあります。大転子は解剖学的に大腿骨の「後外側(斜め後ろ)」に位置しています。大腿骨が正常な角度を保っていれば、大転子は背部寄りに収まり、真横へ過度に突出することはありません。しかし、股関節が内側にねじれると、後方にあった大転子がテコの原理のように真横へとスライドし、視覚的・触覚的に骨が飛び出した状態が完成します。
「股関節のはまりが浅い」と感じる違和感についても、同様のメカニズムで説明がつきます。寛骨臼が骨頭を十分に覆えていない先天的な臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)のケースを除き、多くの成人女性が自覚する不安定感は、大腿骨が内旋したことで骨頭と受け皿の接地面積が減少し、関節の適合性が低下しているために生じています。これに加えて骨盤が前傾または後傾して歪むことで、大転子はさらに外側へ押し出され、強固な横張りを形成するのです。