ロー付け(Brazing)とは、接合したい金属部材(母材)を溶融させず、母材よりも融点の低い合金である「ろう材」を熱で溶かし、部材同士の極小の隙間に流し込んで結合させる金属接合技術です。母材そのものを高熱で溶かして融合させるアーク溶接やレーザー溶接とは、根本的なメカニズムが異なります。
この技術の核となる物理現象が「毛細管現象(キャピラリーアクション)」です。隙間を向かい合わせた金属部材を適切に加熱し、液状に溶けたろう材を接触させると、ろう材は重力や表面張力に抗して狭い隙間へと自ら吸い込まれていきます。冷却されるとろう材が凝固し、部材同士の金属原子が界面で強固に結合(拡散接合)します。
日本産業規格(JIS Z 3001)において、接合技術は使用する溶加材の融点によって明確に線引きされています。
- ロー付け(硬ろう接):作業温度および溶加材の融点が450℃以上のもの。銀ろう、黄銅ろう、リン銅ろう、アルミろうなどが該当し、高い機械的強度を発揮する。
- はんだ付け(軟ろう接):溶加材の融点が450℃未満のもの。主にスズ・鉛合金や鉛フリーはんだが該当し、強度は低いものの、電子回路の導通確保など熱に弱い精密部品の接合に適する。
- 溶接(融接):母材自体を数千度の熱源(アークやバーナー火炎)で直接溶かし合わせ、母材同士を完全に一体化させる接合法。
つまりロー付けは、「母材の形状や寸法を崩さない」というはんだ付けの利点と、「過酷な圧力や荷重に耐える」という溶接の利点を高次元で両立させた、極めて合理的な接合工法なのです。