霰粒腫の手術をためらう最大の要因は、間違いなく「痛みに対する根源的な恐怖」です。まぶたという極めて繊細かつ視覚に近い部位にメスが入る心理的プレッシャーは計り知れません。実際のところ、痛みはどの段階で生じるのか。多数の体験談や手術室での執刀現場の記録を突き合わせると、痛みの実態は特定の数十秒間に集中していることが判明しています。
霰粒腫の摘出術における痛みのピークは、ほぼ100%「局所麻酔の注射」に集約されます。まず点眼麻酔を行って眼球表面の知覚を麻痺させた後、極細の注射針でまぶたの患部周辺へ麻酔薬を注入します。この瞬間、まぶたの裏側(結膜側)または皮膚側に「チクッとした鋭い痛み」と、それに続いて「強い薬剤が組織を押し広げながら注入される激しい圧迫痛」が走ります。体験者たちが「目玉が圧迫されて破裂しそうな痛重さ」「思わず足の指が硬直した」と語るのがまさにこの数秒間です。
しかし、麻酔液が浸潤してしまえば神経ブロックが完了するため、その後のメスによる切開や、内部に溜まった肉芽組織・脂の塊を掻き出す「掻爬(そうは)」の最中に鋭利な痛みを感じることは原則としてありません。体験者が感じるのは、組織を引っ張られる感覚やまぶたを専用の器具(霰粒腫鑷子)でギュッと挟まれる「鈍い圧迫感」、そして血液や洗浄液を拭き取られる手の感触のみです。
激痛の有無を左右する決定的な要素は「患部の炎症度合い」にあります。霰粒腫が細菌感染を伴って赤く腫れ上がり、熱を持っている(急性炎症性霰粒腫)状態では、組織が酸性に傾いて麻酔薬が極めて効きにくくなります。その結果、麻酔が不十分なまま手術を強行することになり、阿鼻叫喚の激痛体験談へと直結してしまうのです。逆に、炎症が完全に沈静化し、硬いしこり(肉芽)のみが残った状態で手術に臨めば、局所麻酔は迅速に奏効し、ネット上の噂とはかけ離れた軽微な負担で終了します。