周期表の下段に位置する希ガスには、極めて特異な物理的挙動を示す仲間が存在します。
ラドン(Rn)の二面性:岩石や土壌に含まれる天然ウランが崩壊していく過程で生じる放射性気体です。「ラドン温泉(ラジウム温泉)」では、ごく微量の放射線が新陳代謝を刺激するホルミシス効果を期待して利用される一方、気密性の高い住宅の地下室などに蓄積した高濃度のラドンを吸い込み続けると肺がんリスクが高まることが知られています。WHO(世界保健機関)などの国際機関は、屋内ラドン濃度のモニタリングと換気対策を推奨しています。
オガネソン(Og)と相対論的量子化学:原子番号118のオガネソンは、周期表の第7周期を締めくくる超重元素です。あまりにも巨大な正電荷を持つ原子核の周りを電子が光速に近い猛スピードで周回するため、アインシュタインの特殊相対性理論に基づく「相対論的効果」が強く現れます。
最新の理論物理・量子化学シミュレーションによると、オガネソンでは電子殻の境界線がぼやけ、電子が雲のように均一に広がる「トマス=フェルミ気体」のような状態になると予測されています。その結果、18族でありながら「常温で気体ではなく固体になるのではないか」「希ガスなのに他の元素と容易に化合する半導体のような性質を持つのではないか」という驚くべき仮説が立てられ、世界各国の研究機関で物性検証に向けた実験が進められています。