なぜディズニープリンセスの相棒として、従来の「小鳥」や「リス」ではなく「カメレオン」が選ばれ、パスカルと命名されたのでしょうか。その裏には、制作現場におけるユニークな実話が存在します。
モデルはスタッフが飼っていた本物のカメレオン
映画のメイキング記録や関係者の証言によると、パスカルという名前は、本作に携わったアニメーターのケリー・ルイス氏が実際に自宅で飼育していた本物のカメレオン「パスカル」が直接のモデルです。ルイス氏が名付けた元の由来は、17世紀のフランスの哲学者・物理学者であるブレーズ・パスカル(Blaise Pascal)。「人間は考える葦である」で有名な思想家から取った名前が、そのままディズニー映画の歴史に残るキャラクター名へと昇格しました。
なぜ爬虫類のカメレオンが相棒に抜擢されたのか?
制作初期のプロット段階では、白雪姫やシンデレラのような従来のプリンセス像に倣い、リスや小鳥といった哺乳類・鳥類が相棒候補として検討されていました。しかし、監督のバイロン・ハワードとネイサン・グレノは次の3つの視点からカメレオンの採用を決断しました。
第一に、「色彩のコントラスト」です。ラプンツェルの象徴である約21メートルもの黄金の髪や紫色のドレスに対し、補色関係に近い鮮やかな「緑」を持つカメレオンは、画面上で抜群の視覚的引き立ちを見せます。
第二に、「塔の閉鎖環境との親和性」です。マザー・ゴーテルに外出を禁じられていたラプンツェルにとって、外界を飛び回る鳥は不自然であり、塔の壁や家具と同化して隠れることができるカメレオンの擬態能力は、密室劇のサスペンスとユーモアを両立させる完璧なギミックでした。
第三に、「表情のギャップ」です。言葉を話せない爬虫類だからこそ、目の動きや体色の変化だけで冷ややかなツッコミを入れたり、ラプンツェルを叱咤激励したりするアニメーション表現が極めてコミカルに映えるという、アニメーター陣の技術的挑戦が込められています。