極上の刺身を作るためには、包丁を入れる前段階の下処理が仕上がりの8割を左右します。特に刺身用のさばき方において最も妥協してはならないのが、「水分の徹底管理」と「幾重にも重なる薄皮の完全除去」です。
1. 胴と内臓の解体と水洗いの境界線
イカをさばく際は、まず胴の中に指を滑り込ませて内臓と胴の結合部を優しく外します。足(ゲソ)とともにワタ(肝)を静かに引き抜き、軟骨を取り除きます。ここで重要なのは、「真水で洗うのは内臓を取り除いた直後の1回のみ」にとどめる点です。イカの身は浸透圧により真水を急速に吸い込み、水っぽくなって旨味が逃げてしまいます。洗った後は、清潔なペーパータオルで内外の水分を一滴残さず拭き取ることがプロの鉄則です。
2. 舌触りを左右する「第4層の薄皮」の剥き方
イカの身には、目に見える外側の有色皮の下に、透明な薄皮が何層にも存在します。外側の皮を剥いただけでは不十分で、表面の筋膜や内側の薄皮が残っていると、口に残る不快な噛みごこちの原因となります。
薄皮を剥く際は、乾いたキッチンペーパーや清潔な布巾で皮の端をしっかりと掴み、身を抑えながら斜め一方向にゆっくりと引き剥がします。指先に少量の塩をつけると滑り止めとなり、滑りやすい内側の透明な皮まで確実に除去できます。この一手間をかけることで、絹のように滑らかな舌触りが生まれます。