取り調べの可視化対象が一部の重大事件から拡大されてきた現在でも、カメラの回っていない事前室でのやり取りや、巧妙な精神的圧迫による警察の取り調べと自白強要の問題は完全には消滅していません。
捜査官の誘導や脅迫から身を守るために日本国憲法第38条および刑事訴訟法で保障されている最強の防壁が、供述拒否権、すなわち「黙秘権」です。しかし現場では、黙秘権の行使と自白の選択をめぐり、被疑者が強い葛藤に苛まれます。「黙秘すると反省していないとみなされて勾留が長引くのではないか」という不安を捜査側に突かれるためです。
捜査段階で一度でも意に沿わない供述をしてしまうと、後からその言葉を取り消すことは著しく困難になります。取り調べに対して曖昧な記憶のまま迎合するくらいであれば、弁護士と方針を固めるまで一切の署名を拒否し、完全に沈黙を貫く姿勢こそが、不当な自白強要を断ち切る唯一の対抗手段となります。