1939年8月、世界に衝撃を与えた独ソ不可侵条約の締結からわずか2年足らず。1941年6月22日、ナチス・ドイツは総兵力約300万人以上、戦車数千両、航空機数千機を投入し、ソ連領内への大規模侵攻を開始しました。これが歴史上名高い「バルバロッサ作戦」です。
不可侵条約を結んでいたにもかかわらず、なぜヒトラーはそれをあっさりと破棄したのか。その最大の理由は、当初からこの条約が「時間稼ぎ」のための政略的妥協に過ぎなかった点にあります。西部戦線でフランスを電撃戦によって短期間で降伏させたドイツでしたが、頑強に抵抗を続けるイギリスを屈服させることができずにいました。ヒトラーは「イギリスが降伏しないのは、背後にソ連という潜在的な希望が存在するからだ」と判断し、ソ連を早期に粉砕することで英国の戦意を完全に挫こうと目論んだのです。
さらに、ドイツにとって戦争継続に不可欠な石油や穀物といった天然資源の自給体制を確立するため、ソ連が領有する豊かな大地は何としても手中に収めたい標的でした。条約破棄は突発的な狂気によるものではなく、ナチスの世界戦略における既定路線だったと言えます。