ネット上のQ&Aサイトや一部のまとめ記事において、不思議の国のアリス症候群は「統合失調症の前兆ではないか」「心が病んでいる証拠だ」といった根拠のない誤解に晒されることがあります。しかし、これは明確に否定されるべき誤謬です。
第一の盲点は、アリス症候群は「錯視・知覚異常」であって「幻覚や妄想」ではないという点です。統合失調症などの精神疾患では、存在しないものが見えたり(幻視)、それに対して確信的な意味づけを行ったり(被害妄想など)しますが、アリス症候群の患者は「実際には机の大きさは変わっていないのに、小さく見えてしまっている」という病識(自らの見え方が異常であるという客観的認識)を明確に保持しています。
第二に、「不思議の国のアリス症候群の特効薬」は存在しないという点です。根本的な不思議の国のアリス症候群の治し方は、背後にある原疾患の治療に尽きます。EBウイルスであれば対症療法を行いながらの安静、偏頭痛が原因であればトリプタン製剤などの予防・治療薬の服用、てんかんであれば抗てんかん薬の処方が選択されます。「アリス症候群そのものを止める単一の薬」を求めて民間療法に頼るのではなく、トリガーを特定する鑑別が何より重要です。