広瀬すず『海街Diary』から10余年、台本なしの現場と4姉妹の絆

広瀬すず『海街Diary』から10余年、台本なしの現場と4姉妹の絆

広瀬すず『海街Diary』から10余年、台本なしの現場と4姉妹の絆に関する注目トピックをまとめてご紹介します。関心のある方は必見です。

『海街diary』の制作において映画ファンの間で最も驚きをもって受け止められたのが、「広瀬すずに対して一切の台本を渡さずに撮影を進めた」という演出手法です。これは是枝監督が『誰も知らない』や『奇跡』といった初期の名作で子役たちに対して実践してきた、いわゆる「是枝メソッド」と呼ばれる伝統的アプローチでした。

なぜ広瀬すずさんに台本を渡さなかったのか。その理由は、文字として書かれた台詞を暗記して演技として再生するのではなく、現場で共演者の言葉や周囲の音をリアルタイムで聞き、その場で生まれた感情をそのまま言葉として発露させるためでした。毎朝の現場入り後、監督が広瀬さんの耳元で「今日はこのシーンで、お姉ちゃんにこう言われたら、こう返してみて」と囁くように口頭で指示を与え、本番の一発撮りに近い緊張感の中で生の芝居を引き出していったのです。

この演出が見事に結実した代表例が、鎌倉の街並みを背景にした数々の名シーンです。特に、同級生の風太(前田旺志郎さん)の後ろに乗って自転車で駆け抜ける「桜のトンネル」のシークエンスは、広瀬さんがその場で初めて目にした満開の桜への純粋な驚きと高揚感が、そのままフィルムに焼き付けられています。計算された演技では決して到達できないドキュメンタリータッチの生々しい美しさは、是枝演出と広瀬すずという類稀な才能が共鳴したからこそ生まれた奇跡でした。

木村 陽翔
著者

木村 陽翔

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。