なぜ彼女が手がける作品は、観客の心を捉えて離さないのか。ヒット作を生み出す秘訣は、理論を超えた「人間の感情のバイオリズム」を察知する鋭い直感にある。完璧な構図のカットであっても、物語の流れを止めるものであれば容赦なく削ぎ落とす。一方で、一見つたない役者の演技であっても、そこに感情の真実が宿っていれば大胆に尺を取る。
論理的なストーリーテリングと、理屈では説明できない人間の生の感情。そのふたつをスクリーン上で衝突させ、絶妙な調和を生み出すセンスこそが香川知子の才能の本質だ。映像のつなぎ目を感じさせないスムーズなカッティングは、観客を自然と映画の世界へ没入させ、鑑賞後の深い余韻を約束する。