当時の大ブームを知らない若い世代の中には、「ミサミサは単なるマスコット的な可愛いヒロインだったのでは」と誤解する向きも少なくありません。しかし、作品構造を冷静に読み解くと、弥海砂という存在は映画『デスノート』のサスペンス性を最も駆動させた狂気と悲哀のエンジンでした。
彼女は両親を強盗に惨殺された凄惨なトラウマを抱え、その犯人を裁いた「キラ(夜神月)」を狂信的に信仰しています。自らの寿命の半分を2度も死神と取引し、残された命を削ってまで月に尽くす姿は、通常の恋愛感情を超越した極限の依存状態でした。
戸田恵梨香が優れていたのは、このキャラクターが持つ「底知れぬ怖さ」と「痛々しい純粋さ」を、コミカルな甘え声の裏側に滲ませていた点です。明るい笑顔のまま他人の命を奪うスイッチを押すサイコパス性と、月に見捨てられることを恐れる少女の孤独を同居させたからこそ、物語に背筋の凍るリアリティが宿ったのです。