辻村深月氏自らが執筆した小説版『小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記』を読むと、映画本編では語り尽くせなかった深い世界観と緻密な裏設定が浮き彫りになります。
まず大きな違いとして挙げられるのが、敵幹部である隊長ゴダートの心理描写です。映画では冷酷な軍人に見えた彼が、実はカグヤ星を再生させるために泥をすすりながら祖国を想っていた背景や、エスパルを生み出した科学者夫妻の悲痛な願いが詳細に補完されています。
また、エスパルたちが抱えていた「永遠の孤独」に対する恐怖も、小説版ではより切実に描かれています。千年もの時を少年の姿のまま生き続け、親しい者が老いて去っていくのを見送るしかなかったルカたちのトラウマを知ることで、なぜ彼らが最後に「有限の命」を望んだのかという理由が、より深く腑に落ちる構造になっています。