結論から言えば、現在の花言葉として公式に「呪い」や「死」といった怖い意味が登録されているわけではない。代表的な言葉は「王者の風格」「富貴」「高貴」「恥じらい」だ。では、なぜ「怖い」という噂が一人歩きしているのだろうか。
最大の要因として挙げられるのが、三遊亭圓朝の落語でも有名な古典怪談『怪談 牡丹燈籠』の存在である。愛する男のもとへ夜な夜な牡丹模様の燈籠を下げて通う女の幽霊——その美しくも哀切な物語があまりにも強烈だったため、花そのものに妖艶で少し恐ろしい影が重なったのだ。
また、植物民俗学の視点から紐解くと、牡丹の散り様も関わっている。牡丹は満開を過ぎると、大輪の花びらが一気にボタボタと地面へ落ちる。この崩れ落ちるような散り方が、かつての武士階級に「首が落ちる」不吉な落城の光景を連想させたという説もある。圧倒的な美しさと散り際の儚さ。その落差が人々に強い畏怖の念を抱かせたのだろう。