いま、築50年を超える昭和レトロ建築が次々と解体の危機に瀕している。産業廃棄物として粉砕されれば二度と手に入らない。その危機感から、古材やヴィンテージ建具を専門にレスキューする業者や職人たちのネットワークが活発化している。
特に古民家リノベーションの現場において、昭和の型板ガラスは空間の主役として劇的な復活を遂げている。既存の窓枠から丁寧に取り外し、現代の木製框に組み直して間仕切り戸にする。あるいは小さくカットして室内照明のシェードやカフェのトレイ、コースターとしてアップサイクルする試みが広がっている。
「新築の無機質な空間に一枚はめ込むだけで、部屋全体の陰影がガラリと変わる」。あるリノベーション設計士はそう語る。光を柔らかく乱反射させ、視線を遮りながらも人の気配を温かく伝える。現代のハイテクガラスには出せない情緒が、空間に奥行きを与えている。