五右衛門風呂と聞いて真っ先に思い浮かぶのが、湯船の底に浮かぶ木製の「底板(すのこ・ゲタ)」と、安土桃山時代の大盗賊・石川五右衛門の釜茹での刑です。歴史的資料によると、文禄3年(1594年)に京都・三条河原で処刑された石川五右衛門の伝説が名前の由来とされていますが、実際の風呂構造には極めて合理的かつ緻密な生活の知恵が詰まっています。
最大の特徴は、直火(じかび)による加熱構造です。かまどの上に据えられた鋳鉄(ちゅうてつ)製の釜を薪の炎で直接熱するため、湯船の底部は瞬間的に100℃以上の超高温に達します。もし底板がなければ足裏に重度の火傷を負ってしまうため、浮力で浮いている木製の底板をつま先とかかとで捉え、湯の中にぐっと踏み沈めてその上に立ち、ゆっくり腰を下ろす設計になっているのです。
また、温かい湯が上部に溜まり冷たい水が下部に沈む対流現象において、底部から直接強烈な熱を加える五右衛門風呂は、湯全体を均一に温める効率的な熱循環を生み出します。鋳物から放射される遠赤外線効果により、体の深部まで熱が浸透し、風呂上がり後も数時間にわたって湯冷めしにくいという極めて高い温熱特性を誇ります。