「朝入念にファンデーションを叩き込んだのに、ランチタイムには鏡を見るのが憂鬱になる」という声は後を絶ちません。日本美容皮膚科学会の報告や化粧品原料メーカーの定点観測データによると、成人の皮脂分泌量は起床後から徐々に上昇し、午前11時から午後2時の時間帯にピークを迎えることが実証されています。しかし、同じ時間帯を過ごしながら崩れ知らずの肌を維持できる人と、ドロドロに融解してしまう人との間には、明確な構造的差異が存在します。
決定的な要因として挙げられるのが、インナードライによる化粧崩れです。肌の水分計測定器を用いた臨床テストでは、顔表面が激しくテカっている被験者のうち、実に約68%が角層水分量30%以下の乾燥状態に陥っているというデータが示されています。角層内部がカラカラに乾いていると、生体防御反応として皮脂腺から大量のスクワレンやトリグリセリドが分泌されます。つまり、肌が「乾燥の危機」を察知して急ごしらえの油膜を張ろうと暴走している状態です。
さらに見逃せないのが、Tゾーンのテカリをもたらす皮脂腺密度の問題です。額から鼻先にかけてのTゾーンは、頬や目元と比較して毛穴の密度が約7倍近く高く、皮脂腺そのものも大きく発達しています。ここに油分の多いファンデーションを厚塗りしたり、皮脂吸着力の強すぎる下地を全顔に伸ばしたりすると、皮膚常在菌のバランスが崩れ、わずか数時間でファンデーションの乳化破壊が引き起こされます。皮脂過剰分泌を抑えるスキンケアの根本は、油分を目の敵にして削ぎ落とすことではなく、洗顔直後の水分保持能を極限まで高めるアプローチにあるのです。