ヨークシン編後、突如としてカルトが幻影旅団 ナンバー4の座に就いた展開は、読者に大きな衝撃を与えました。かつてヒソカが偽りの団員として座していた「No.4」のタトゥーを背負い、盗賊集団の門を叩いた背後には、冷徹な暗殺者の計算と極めて個人的な動機が交錯しています。
グリードアイランド編の終盤、除念師を探す旅団員たちに同行したカルトは、自らのモノローグで「ボクは兄を取り戻すために旅団に入った」と独白しています。この「取り戻すべき兄」とは一体誰を指しているのか。作中の力学を分析すると、極めて重層的な意味合いが浮かび上がります。
最も有力な本命は、家を出てゴンたちと共に旅立った三男キルアです。母キキョウの寵愛を一身に受けながらも家族を拒絶して自由を求めたキルアに対し、カルトは強い憧憬と嫉妬、そして「家族の元へ連れ戻したい」という執着を抱いています。世界最高峰の犯罪組織である幻影旅団に身を置くことで、一族の敷いたレールを超えた実力を身につけ、キルアを連れ戻すだけの影響力を手に入れようとした動機は極めて自然です。
同時に、後述する第四子アルカの存在も無視できません。ゾルディック家の地下深くに幽閉されていたアルカと、キルアとの強固な絆を目の当たりにしたカルトにとって、「兄の心を取り戻す」という言葉には、自分へ向けられていない愛情を奪還したいという切実な渇望が込められています。