全国の教育界を揺るがせたのが、柳川高等学校の校長による改革の真相です。陣頭指揮を執るのは、理事長兼校長を務める古賀賢(こが・まさる)氏。かつて「校則の厳格さ」を美徳としていた伝統私学において、古賀校長が断行した改革はまさにコペルニクス的転換でした。
象徴的だったのが、全国の高校に先駆けて踏み切った「校内でのスマートフォン完全解禁・授業活用」です。文部科学省が校内持ち込みの規制緩和を本格議論するはるか以前から、「社会で必須となるツールを学校だけが排除するのはナンセンス」と断じ、生徒に自己管理を促す方針へと舵を切りました。さらに、タイに付属校を開設したほか、VR技術を活用したメタバース空間での教育活動や学校説明会の実施など、地方都市の私学としては異例の先進的プロジェクトを次々と導入しました。
教育社会学の視点からこの改革を読み解くと、明らかな「地方私学の生存戦略」が見えてきます。少子化が急速に進む筑後地域において、旧来の「気合と根性のスポーツ校」という単一ブランドのままでは、少子化の荒波に呑まれることは火を見るより明らかでした。古賀校長は、全国区の名門という伝統の看板を維持しつつ、中身を「近未来型オルタナティブ教育」へと強制的に上書きすることで、県外・海外からの志願者を呼び込むエコシステムを設計したのです。
無論、このドラスティックな変化に対しては、伝統を重んじる古参OBや一部教員からの反発も少なからず存在しました。「規律が緩むのではないか」「奇をてらった宣伝先行ではないか」という懸念の視線です。しかし、生徒自らが主体的に端末を使いこなし、国際交流を通じて自己肯定感を育む姿が可視化されるにつれ、学園改革は「必然の進化」として地域に定着しつつあります。