なぜ、これほどまでに急激な悪化を辿ったのか。そこには、勘三郎という表現者が抱えていた「舞台への異常なまでの執念」があったと指摘する声は少なくない。彼は病床にあっても、常に次の公演の台本を手放さず、筋力低下を防ぐためのリハビリに焦りを見せていたという。
「早くファンの前へ、早く板(舞台)の上へ」。その強い精神力は、時に肉体が発する危険信号を覆い隠してしまう。医師団の制止を振り切るかのように、彼は自己の限界を超えて動こうとした。精神が肉体を凌駕しようとした結果、限界を迎えていた免疫システムが決壊したのではないか。そう語る演劇関係者は今も多い。