現代の日本では当たり前となった生ビールですが、ここに至るまでには日本の醸造技術者による長年の試行錯誤がありました。
明治から昭和中期にかけてのビールは、ほぼすべてが熱処理ビールでした。当時の技術では、出荷時にビール内の酵母を完全に除去できず、常温放置すると酵母の働きで香味バランスが崩れたり、混入した雑菌によって変質したりするリスクが高かったためです。長期輸送と常温保存を可能にするためには、加熱殺菌が不可欠でした。
状況を一変させたのが、1960年代後半から1970年代にかけて飛躍的に進歩した「精密ろ過技術(セラミックフィルターやミクロフィルター)」の実用化です。この技術革新により、ビールの風味を損ねる原因となる熱を加えることなく、ミクロン単位のフィルターで酵母や微生物だけを物理的に除去することが可能になりました。
加熱によって生じる独特のカラメル臭や重たさを排除し、麦汁本来の爽快でクリアな風味をそのまま届けることができるようになった結果、日本のビール市場は急速に「生ビール」一色へとシフトしていきました。