斎藤工の表現力と独自の世界観を語る上で避けて通れないのが、小学校時代初期に受けた「シュタイナー教育」の存在です。彼が通っていたのは、当時東京都三鷹市に設立されていた「東京シュタイナーシューレ」(現・学校法人シュタイナー学園)。ルドルフ・シュタイナーが提唱した人智学に基づくこの教育法は、知育偏重を退け、子どもの内面的な精神発達や芸術性、自然との調和を重視するオルタナティブ教育の代表格として知られています。
後年の特番インタビューやTBS系『人生最高レストラン』などの出演時、斎藤本人が「幼少期はテレビや映画を見ちゃダメだと言われていた」と振り返っている通り、当時の家庭では電子メディアへの接触が厳しく制限されていました。受動的な映像情報によって子どもの自発的な空想力や感性が阻害されることを防ぐため、一般的なアニメやバラエティ番組はおろか、民放のコンテンツそのものから完全に遮断された日常を送っていたのです。
玩具についても、量産されたプラスチック製のおもちゃやキャラクターグッズは一切与えられず、自然の木切れや蜜蝋粘土、羊毛といった天然素材を用いて「自ら遊びを創造する」ことが日常でした。情報が氾濫する都市環境において、あえて外部のノイズを遮断し、内省的な対話と感覚器の純度を高めたこの特別な時間が、現在の斎藤工を特徴づける深い思索力と静謐な佇まいを決定づけたことは明白です。