インターネット上の古い言説や一部のゴシップ記事では、今なお「女優は30歳を過ぎると主役オファーが激減し、母親役や脇役に回される」という俗説が語られることがあります。しかし、近年のテレビ局の編成方針や配信プラットフォームの投資動向を精査すると、この見立てが事実無根であることは明白です。
最大の理由は、視聴者層と購買決定権の構造変化にあります。地上波ドラマにおいて最も重視されるコア視聴率(13歳〜49歳の男女)、および有料配信サービスに月額課金を行う主要ユーザー層は30代〜50代が中心です。この層が真に共感できるのは、人生の挫折、キャリアの葛藤、複雑な人間関係をリアルに体現できる30代の俳優陣にほかなりません。若年層向けの学園モノやライトなラブコメディが配信市場で飽和するなか、骨太な人間ドラマを成立させられる主演女優の価値は、むしろ以前よりも高騰しています。
さらに、かつてのように芸能事務所の意向だけで過酷なスケジュールを強いられるケースは激減しました。過労によるバーンアウトを防ぐため、1年に出演する映像作品を厳選し、プライベートの時間を十分に確保することが業界標準となりつつあります。「露出が減った=人気低下」ではなく、「厳選した仕事にのみ登壇するプレミアム化」が進んでいる点こそが、現代の芸能界を読み解く決定的な視点です。