脚本を担当した三谷幸喜は、かねてより中森明菜のファンであることを公言しており、小石川ちなみというキャラクターは完全に彼女への「当て書き」として執筆されました。華やかなスポットライトを浴びながらも、内側に抱える繊細な脆さと哀哀とした孤独感——そのパブリックイメージと本質的な魅力を巧みにストーリーへ昇華させています。
本作における謎解きの白眉は、「激しい豪雨」を利用した心理的・物理的トリックにあります。被害者が残したダイイングメッセージの解読はもちろんのこと、古畑任三郎が彼女を犯人だと確信した決定的な手掛かりは、彼女の何気ない嘘と天候の矛盾でした。
「雨が降っていたから外に出られなかった」と主張するちなみに対し、古畑は現場の状況や愛犬の濡れ具合、衣服の状態から緻密に外堀を埋めていきます。感情的に追い詰めるのではなく、論理のパズルを静かに完成させていくプロセスは、視聴者に知的興奮と切なさを同時に残しました。