観客が最も息を呑んだ映画怒り犯人役の正体と真相は、沖縄の無人島でバックパッカーとして潜伏していた田中信好(森山未來)でした。警察が追跡していた凶悪犯・映画怒り山神一也の正体は、他でもない田中だったのです。
本作の恐ろしさは、単に「誰が犯人か」というフーダニットの仕掛けにとどまりません。真犯人が判明した瞬間に露わになる、他の2つの舞台(千葉・東京)で起きた「信じきれなかった側の取り返しのつかない悲劇」こそが、観客の胸をえぐる真の結末となっています。
映画怒り松山ケンイチ田代役の真相は、父親が背負った巨額の借金から逃れるために名前を変えて日雇い労働を転々としていた、ただの不器用で心優しい青年でした。警察の公開捜査特番を見てパニックに陥った槙洋平(渡辺謙)と娘の愛子(宮﨑あおい)は、田代の行方を警察に通報してしまいます。無実であることが判明した瞬間、愛子は自らが最も愛した人間を疑ってしまった罪悪感と痛恨の念から、漁港の路上で獣のような絶叫を上げて泣き崩れました。
一方、東京の直人(綾野剛)もまた完全に無実でした。直人は心臓に重篤な持病を抱えており、身寄りもなく静かに最期を迎えようとしていた孤独な青年だったのです。優馬(妻夫木聡)の自宅近辺で起きた空き巣事件や、見知らぬ女性(実は児童養護施設時代の幼馴染・薫)と会っていたことから、優馬は直人を犯人ではないかと疑い、合鍵を回収して冷淡に突き放してしまいます。直人は持病の発作を起こし、誰にも看取られることなく公園のベンチで人知れず息を引き取りました。警察からの連絡でその事実と直人の真意を知った優馬が、新宿の路上で嗚咽を漏らし崩れ落ちる姿は、涙なしには観られない名シーンです。
そして、映画怒りネタバレ結末と犯人の動機において明かされた山神の精神構造は、あまりにも身勝手で空虚な「純粋な悪意」でした。山神が八王子で何の落ち度もない夫婦を惨殺した動機は、「真夏の猛暑の中、日雇い労働の現場で差し出された一杯の冷たいお茶」にありました。夫婦の無垢な善意や同情に対し、劣等感に塗れた山神は「自分が見下された、憐れまれた」と一方的に逆上し、夫婦を拷問の末に殺害したのです。
沖縄で田中として振る舞っていた山神は、泉(広瀬すず)が米兵に暴行された凄惨な現場を目撃しながらも、助けるどころかそれを嘲笑い、自らの宿舎の壁に「怒」の血文字を刻みつけました。慕っていた田中の本性を知り、自らの無力さに苛まれた辰哉(佐久本宝)によってハサミで刺殺されるという、救いのない結末を迎えます。