世間一般に彼の存在が広く知れ渡った契機は、2019年7月期の日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』でした。主人公・君嶋隼人(大泉洋)の長男・博人役のオーディションにおいて、制作陣を唸らせたのは、当時わずか9歳とは思えない「台詞の行間を読む力」と「感情の爆発力」でした。ラグビーを通じて内気な性格を克服していく博人の姿は社会現象を巻き起こし、天才子役として多数のメディアからオファーが殺到しました。
しかし、ドラマ終了後の彼が選んだのは、テレビタレントとして消費される道ではなく、歌舞伎の古典と真摯に向き合う道でした。以下の表は、二代目市川右近のこれまでの歩みと客観的データをまとめたものです。
劇評家たちの間でも、二代目右近の評判は年々高まっています。古典の名作『実盛物語』の太郎吉や『義経千本桜』の安徳帝など、名だたる子役の大役をことごとく成功させてきた実績は伊達ではありません。観客の視線を惹きつける天性の華に加え、澤瀉屋(現・高島屋)の遺伝子であるダイナミックな身体運動と、澄んだ台詞回しは、歌舞伎座の三階席の隅々にまで届く力強さを持っています。