多くの利用者が「意味がない」と見切りをつける最大の引き金は、そもそも電話が全く繋がらないという物理的障壁です。公的統計や日本いのちの電話連盟の報告資料を分析すると、全国に年間数十万件から百万件規模で寄せられる着信試行に対し、実際に受話器が取られる受話率はわずか数%から10%未満にとどまる地域が珍しくありません。
1回あたり30分から1時間ほど丁寧に耳を傾ければ、1台の回線で対応できる人数は1日に十数人が限界です。全国で何千人もの相談希望者が一斉に発信しているため、回線は24時間パンク状態に陥っています。この過酷な需給ギャップを加速させているのが、相談員ボランティアの激減と高齢化という深刻な現状です。
いのちの電話の相談員は、基本的に無報酬の民間ボランティアで構成されています。相談員になるためには、1〜2年に及ぶ厳しい研修を受け、自己負担で受講料を支払う必要があります。自らの身を削って他者の生死に向き合うという重責に対し、現役世代が参入するハードルは極めて高く、相談員の平均年齢は年々上昇。60代から70代以上が主力となっている現場も少なくありません。その結果、深夜帯や早朝のシフトを埋めることができず、開局時間そのものを縮小せざるを得ない支部が各地で相次いでいます。