ネット空間でしばしば流布される言説の一つに、「谷口真由美は極端な左派イデオロギーに染まった扇動者である」というステレオタイプがあります。しかし、彼女の論文や一次発言を冷静に検証すると、この言説には大きな誤解とバイアスが含まれていることが分かります。
第一に、彼女の主張のバックボーンは決して共産主義的・社会主義的な思想ではなく、「国際人権条約」と「日本国憲法」の法解釈に基づいています。日本が国連加盟国として批准している女子差別撤廃条約や子どもの権利条約といった国際規範に照らし合わせ、日本の法制度や運用実態がいかに乖離しているかを論理的に指摘しているに過ぎません。彼女の言葉が過激に聞こえるのは、日本社会がこれまで「慣習」や「空気」によって無視し続けてきた国際基準を、真正面から突きつけるからです。
第二に、彼女の「おっさん批判」は、単なる男性排斥(ミサンドリー)ではありません。自著でも明言されている通り、彼女が批判しているのは「男性という性別」ではなく、「同調圧力を強要し、不祥事を見て見ぬふりし、後進に席を譲らない構造的システム(=おっさんの掟)」です。実家で長年ラガーマンの逞しさや苦悩に寄り添い、家庭では夫や息子たちと良好な信頼関係を築いている彼女の原風景には、男性個人への敵意は存在しません。ネット上で切り抜かれた断片的な言葉の端々が、文脈を削ぎ落とされたまま消費されている実態には注意が必要です。