長嶋茂雄氏の次男である長嶋正興氏は、1970年11月13日生まれ。端正な顔立ちと精悍な体躯を持ち、父譲りの勝負勘を野球ではなく「レーシングカーのコックピット」で発揮した異色の経歴を持ちます。暁星小学校から成城学園中学校・高等学校を経て駒澤大学経済学部へ進学した正興氏は、学生時代からモータースポーツに魅せられ、1992年に本格的なレースデビューを果たしました。
国内最高峰のカテゴリーである全日本GT選手権(現・SUPER GT)やスーパー耐久シリーズに参戦し、父のネームバリューを一切利用することなく実力主義のパドックでハンドルを握り続けました。しかし、2008年シーズンをもって忽然とサーキットを去ることになります。レース関係者が当時をこう振り返ります。
「時速300キロ近い極限の世界では、一瞬の判断ミスが命取りになります。正興選手はクラッシュによる大怪我を経験し、肉体的な限界と常に隣り合わせでした。さらに、年間数千万円から数億円規模のスポンサー資金を自力で集め続けなければならない過酷なモータースポーツの構造疲労もありました。40歳という節目を前に、『自分の力で走るべきレースはやりきった』と納得して身を引いたのが真相です」
引退後の転身先として正興氏が選んだのは、華やかな芸能界や野球界ではなく、驚くべきことに環境保全とアグリカルチャー(農業)の領域でした。栃木県那須地域をはじめとする豊かな自然環境に拠点を置き、有機農業の推進や自然エネルギー、森林保全プロジェクトに参画。2026年現在も、大規模な営利事業としてではなく、土と向き合い環境を守る地道なライフワークとして地域社会に根ざした活動を続けています。
なお、プライベートにおける結婚や妻の存在については、現役時代から現在に至るまで公表されていません。一部で一般女性との入籍や家庭生活が囁かれたものの、本人が一般人としての生活を固く守るスタンスを貫いており、メディアへの私生活の露出を徹底して避けています。