一日一万歩は逆効果?歩きすぎのリスクと本当に痩せる理想歩数

一日一万歩は逆効果?歩きすぎのリスクと本当に痩せる理想歩数

一日一万歩は逆効果?歩きすぎのリスクと本当に痩せる理想歩数の詳細について、分かりやすい解説を詳しくお届けします。

そもそも、なぜ日本のみならず世界中で「1日1万歩」が健康のバイブルのように崇められるようになったのでしょうか。その歴史を遡ると、純粋な医学研究ではなく、昭和の高度経済成長期に仕掛けられた商業プロモーションに突き当たります。

発端は、1964年の東京五輪翌年である1965年、日本の測定機器メーカーが世界初となる個人向け歩数計を発売した際につけた商品名「万歩計」でした。「1日に1万歩歩こう」という呼びかけは、語感が良くキりのいい数字として消費者の購買意欲を刺激し、メディアを通じて瞬く間に定着。長年にわたり官公庁の健康啓発スローガンにすら流用されてきましたが、発売当時に「なぜ1万歩なのか」を裏付ける厳密な臨床研究は存在していませんでした。

この半世紀にわたる固定観念に風穴を開けたのが、群馬県中之条町で実施された通称「中之条研究(奇跡の8000歩)」です。

東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利博士らの研究チームは、中之条町に住む65歳以上の全住民約5,000人を対象に、24時間365日の身体活動データと医療データを15年以上にわたって追跡調査しました。加速度計を用いて「歩数」だけでなく「運動強度」をミリ秒単位で記録し続けた世界初の大規模研究です。

その結果判明したのは、身体活動の黄金律とも呼べる明確な数値でした。

「1日8,000歩・そのうち速歩き(中強度活動)20分」。

この水準を維持している住民は、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の発症率が激減し、認知症やうつ病の有病率も有意に低いことが証明されました。そして決定的な発見は、「8,000歩を超えて1万歩や1万2,000歩歩いたとしても、予防できる病気の種類や発症リスクの低下率に有意な差は見られない」という事実でした。健康長寿を獲得するための至適域(スイートスポット)は、まさに8,000歩にあったのです。

渡辺 美咲
著者

渡辺 美咲

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。