幼虫飼育のクライマックスであり、最も死亡事故が多発するのが「蛹化(ようか)」と「羽化(うか)」のフェーズです。
春から初夏にかけて、幼虫はそれまで活発だった摂食をピタリと止め、体色が半透明の乳白色から「濃いクリーム色〜黄褐色」へと変化し、皮膚に細かいシワが寄ってきます。これが蛹化の前兆です。幼虫は自身の唾液とフンでケースやボトルの壁面に硬い空洞「蛹室(ようしつ)」を形成します。
ここで初心者が犯しやすい最大の過誤が、「動かなくなった」「マットが汚れている」と勘違いして蛹室を壊してしまう事態です。蛹室を作っている最中(前蛹状態)や蛹の時期に振動を与えたり掘り出したりすると、高確率で羽化不全(翅が閉じない、羽化途中で死亡)を引き起こします。外から蛹室が確認できたら、ケースを暗所に移動させ、一切の振動を与えずに見守る必要があります。
無事に成虫へ羽化しても、すぐに掘り出してはいけません。羽化直後の成虫は体がまだゼリーのように柔らかく、内臓も完成していません。適切な「掘り出し時期」は、羽化を確認してから最低でも「3週間〜1ヶ月」が経過し、体表が完全に黒く硬化してからです。自然界では羽化後そのまま蛹室で越冬し、翌年の初夏に自力で脱出してくる個体も多いほど、成虫の成熟には時間を要します。焦りは禁物です。