映画レビューサイトやSNSのコミュニティにおいて、興行収入の数値と作品の芸術的・物語的評価は必ずしも一致しないという議論が長年続けられています。特に「初期の本格推理路線こそが至高」とする古参ファンと、「ド派手なアクションと重厚なキャラクタードラマ」を歓迎する新世代ファンの間には、評価軸の明確な差異が存在します。
脚本家・故野沢尚氏が手がけた第6作『ベイカー街の亡霊』は、興行収入こそ34.0億円にとどまるものの、Filmarksや各種ファン投票では今なお「最高傑作」として不動の1位を争い続けています。19世紀末のロンドンを舞台にした仮想空間、当時の日本社会における世襲制や教育問題への痛烈な批判、そしてシャーロック・ホームズの世界観を完璧に融合させたシナリオは、大人の鑑賞に堪えうる孤高の完成度を誇ります。
一方で、近年の100億円突破作品群は、大規模な物理破壊やスケール感あふれるカーチェイス、キャラクター同士の心理戦を前面に押し出しています。これに対し一部の批評家からは「推理要素の希薄化」を指摘する声も上がりますが、東宝関係者の証言によると「現代の劇場鑑賞体験において、映画館の音響と大画面でしか味わえないカタルシスを提供することが、ファミリー層からZ世代までを動員する最大の要因」と分析されています。知的な謎解きとアトラクション性の両立という難題に対し、時代ごとの最適解を模索し続けた結果が現在の興行記録につながっています。