男性から女性への性別移行(MtF: Male to Female)を希望する場合、感情的な勢いやネット上の不確かな情報だけで動き出すのは極めて危険です。日本精神神経学会が策定する「性別不合 診療ガイドライン」に則り、段階的かつ計画的にステップを踏むのが医学的な大原則となっています。
移行の第一歩となるのは、専門のジェンダークリニック 初診を予約し、精神科領域の医師による慎重なアセスメントを受けることです。初診では生育歴、自身の性同一性に対する違和感の自覚時期、社会生活での困りごとなどが詳しく聞き取られます。血液検査や染色体検査、心理検査を通じて身体的要因や他の精神疾患の除外診断を行い、複数回の面談を経て正式に性同一性障害 診断書(性別不合の診断書)が交付されます。
診断書を取得した後は、希望と適性に応じて身体的移行へと進みます。抗アンドロゲン剤(男性ホルモン抑制剤)と卵胞ホルモンを用いたホルモン治療の開始、ヒゲや体毛の医療脱毛、ボイストレーニングによる発声調整など、日常生活における女性としての生活体験(実生活経験:RLE)を積み重ねていきます。その上で、本人の希望に応じて性別適合手術(SRS)を検討し、最終的に家庭裁判所での名の変更や戸籍の性別変更申し立てへと進むのが標準的なロードマップです。