筆者はこれまでに国内外で数百試合の取材を重ねてきましたが、チャントが放つ破壊力はテレビ中継の画面越しでは決して測れません。特に埼玉スタジアム2002や新国立競技場など、屋根に音が反響する構造の会場では、ゴール裏サポーター数千人が一斉に跳びはねながらチャントを歌うと、最大110デシベル前後(電車が通る高架下に匹敵する音圧)に達し、座席の床板を通して振動が身体の芯まで伝わります。
SNSや知恵袋、サポーターコミュニティに寄せられる実際の声を検証すると、チャントに対するリアルな体験談が見て取れます。
「初めてスタジアムのゴール裏に行ったが、歌詞を知らなくても周りの手拍子に合わせて跳ねているだけで、得点時に見知らぬ隣の人とハイタッチしていた。日常では絶対に味わえない解放感がある」(20代男性・Jリーグ観戦初心者)
「テレビで見ているときは『また同じ歌をずっと歌っている』と思っていたが、現場に行くと納得した。劣勢のときにチャントのボリュームが一段上がって、選手が最後の力を振り絞ってカウンターを仕掛ける瞬間は鳥肌が立つ」(30代女性・サッカー日本代表戦初観戦)
一方で、実体験に基づく摩擦や懸念の声もゼロではありません。「小さな子どもを連れてゴール裏近くの席に座ったら、大音量と立ち見の熱気で試合がまったく見えず、子どもが怖がって泣いてしまった」という失敗談も散見されます。スタジアム観戦において、チャントが鳴り響くエリアとの距離感を把握しておくことは極めて重要です。