楽譜上で最も混同されやすいのが、同じ「弧(円弧状の線)」で描かれるタイとスラーです。視覚的な類似性から初見演奏でミスを誘発しやすいポイントですが、その目的と演奏上のアクションは明確に区別されています。
最大の見分け方は「結ばれている音符の音高(ピッチ)が同一であるかどうか」です。音楽記号タイとスラーの違いを一言で言えば、タイは「音の長さを足し算する記号」であり、スラーは「異なる音同士のつなぎ方を指定するアーティキュレーション記号」です。
語源を探ると、音楽用語タイの由来と英語表記は英語の「Tie(結ぶ、縛る)」に由来し、イタリア語では「レガトゥーラ・ディ・ヴァローレ(legatura di valore=音価の結合)」と呼ばれます。一方のスラー(Slur)は「滑らかにする」「不明瞭につなぐ」を意味し、イタリア語では「レガトゥーラ・デクスプレッシオーネ(legatura d'espressione=表情の結合)」と区別されます。つまり、タイは構造的な音の長さを指定し、スラーは音楽的なニュアンスを指定しているのです。
両者の違いと現場で発生しやすいエラーを整理した比較データは以下の通りです。
タイとスラー見分け方の真相として注意すべき例外は、和音における記譜です。3和音や4和音の中で一部の構成音だけが同一音高で結ばれ、他の音が別の音へ進行する場合、同一音の曲線は「タイ」、進行する音の曲線は「スラー」として同時に機能します。この複合パターンでは、どのパートが保持され、どのパートが動いているのかを瞬時に視認する読譜力が求められます。