日本レコード協会(RIAJ)および主要流通各社の統計データによると、国内のアナログディスク生産金額は2020年代前半から連続して前年比二桁成長を記録し、2026年現在もその勢いは衰えていません。かつて一部の愛好家やDJだけの領域だった市場に、なぜ今これほど多くの一般リスナーが流入しているのでしょうか。そのレコードブーム再燃の理由は、デジタルネイティブ世代における「体験の物質化」への欲求にあります。
サブスクリプションのアルゴリズムが提示する「おすすめ楽曲」を無意識に消費する日常に対し、レコード店に足を運んで棚を指でめくり、偶然の1枚を引き当てる行為――いわゆる「ディグる(掘り起こす)」体験は、極めてクリエイティブな文化的冒険として再評価されています。30センチ四方の大型ジャケットが放つアート性や、回転するターンテーブルの上で溝から音が立ち上がる物理的なプロセスは、画面をタップするだけの音楽再生では決して得られない情緒的な満足感をもたらします。
さらに、国内外の現役アーティストが新譜をデジタル配信と同時にLP盤でリリースすることが標準化された点も無視できません。新旧のリスナーが交錯する現場として、実店舗の存在価値がかつてないほど高まっています。