ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「民営住宅はぼったくりが多い」「公的支援は一切受けられない」といった極端な言説が散見されます。しかし、契約ルールを正しく把握し、制度を知っていれば防げるトラブルや利用できる経済支援は数多く存在します。
まず、民営の賃貸住宅契約の注意点として警戒すべきは、「特約条項」の文言です。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、経年劣化や通常損耗(家具の設置跡や日焼けなど)の修繕費は家賃に含まれており、大家側が負担するのが原則と明記されています。しかし、契約書の特約欄に「退去時のルームクリーニング費用一式(平米単価〇〇円)は借主負担」「エアコン分解洗浄費用は借主負担」といった記載があり、署名捺印してしまうと、それが暴利行為でない限り法的に有効とみなされる傾向があります。内見時や契約前の重要事項説明において、特約の範囲を精査することは必須の防衛策です。
もうひとつの大きな誤解は、「民営住宅には家賃の公的支援が存在しない」という思い込みです。実は、民営賃貸住宅の家賃補助制度は重層的に用意されています。
代表的なものが、厚生労働省が所管する「住居確保給付金」です。離職や倒産、あるいはやむを得ない休業等で収入が激減し、住まいを失う恐れがある場合、原則3ヶ月(最長9ヶ月)にわたり、自治体から大家の口座へ直接、家賃相当額(自治体ごとの上限あり)が支給されます。この制度は公営住宅だけでなく、民営住宅の入居者にも完全に適用されます。
さらに自治体レベルでも、独自の家賃補助を行っている地域が存在します。例えば、東京都特別区の一部や地方中核都市では、子育て世帯や新婚世帯が区内の民営賃貸住宅に入居する場合、月額1万〜3万円程度の家賃助成を数年間にわたって支給する施策を実施しています。加えて、高齢者や障害者、子育て世帯などの入居を拒まない「セーフティネット住宅(住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅)」に登録された民営物件では、国や自治体から家賃低廉化の補助が出ているケースもあります。知らずに全額自費で払い続ける前に、管轄の市役所や区役所の住宅政策課へ相談する価値は極めて高いと言えます。