喉の痛みに怯え、発症から数時間でドラッグストアへ走り、抗原検査キットを購入して鼻に綿棒を突っ込む人が後を絶たない。しかし、この「早すぎる検査」こそが、隠れインフルエンザを見落とす最大の落とし穴だ。
医療機関で用いられる迅速抗原検査や一般用抗原定性検査キットは、検体中に一定量以上のウイルス抗原が存在しなければ反応しない。ウイルスが粘膜で爆発的に増殖するまでには物理的な時間を要する。咽頭痛と抗原検査キットの偽陰性に関する日本臨床ウイルス学会等の報告では、症状自覚から12時間未満で検査を実施した場合、感度が約50〜60%程度まで落ち込むとされている。つまり、実際には感染しているにもかかわらず、2人に1人は「陰性」と判定されてしまう計算だ。
偽陰性を信じ込んだ患者は「インフルではなかった」と安心して出社し、周囲にウイルスを撒き散らす。では、インフルエンザ検査の適切なタイミングはいつなのか。結論から言えば、「喉の痛みや全身のだるさを明確に自覚してから12時間以降、24〜48時間以内」が最も診断精度が高くなる黄金時間である。
インフルエンザ治療薬(タミフル、ゾフルーザ、イナビルなど)は、ウイルスの増殖サイクルを遮断する薬理機序を持つため、「発症後48時間以内」に投与を開始しなければ効果が期待できない。発熱がない場合の受診目安は以下の通りだ。
- 発症〜12時間未満:市販キットを使っても偽陰性のリスク大。水分補給と安静を徹底し、外出を控えて経過観察する。
- 発症後12〜24時間:受診のベストタイミング。迅速検査の感度が85〜90%以上に達し、陽性判定が出やすい。
- 発症後48時間以降:抗ウイルス薬の有効性が著しく低下する。重症化リスクのない成人であれば、対症療法中心の治療に切り替わる。