ネット上のコミュニティやQ&Aサイトでは、時折「昔のママレンジは白熱電球の熱を利用して焼いていた」という言説が見受けられます。しかし、これは海外製のイージー・ベイク・オーブン(白熱電球の熱を庫内に閉じ込めて加熱するアメリカの玩具)や、後続の他社製保温トイと記憶が混同された明確な誤認です。
実際のママレンジの仕組みは、家庭用100V電源コードをコンセントに差し込み、内部のニクロム線電熱ヒーターで直接フライパンを熱する構造でした。消費電力は約60W前後と控えめながら、直径7〜8センチメートルの専用ミニアルミフライパンの底面を十分に熱し、付属のスポイトで水と粉を溶いたタネを流し込めば、本当にプツプツと気泡が浮き上がって焼き上がったのです。ひっくり返すための専用フライ返しも付属しており、子ども向けとはいえ構造自体は小型の電気コンロそのものでした。
この「リアルな熱源」こそが当時の子どもたちの自尊心を刺激した一方で、コードの引っ掛けによる本体転倒、天板接触による軽度の火傷など、保護者が目を光らせていなければ危険を伴う側面もありました。現代の玩具開発において最優先されるのは「保護者が目を離しても重大事故が起きないこと」です。昭和の熱源構造が淘汰されたのは、リスク管理の観点からは必然の帰結だったと言えます。