第72回紅白には、表面的な歌唱順や演出以外にも、長年の慣習を塗り替えた構造改革がいくつも存在していました。
「紅組司会・白組司会」の廃止という静かな革命
長年続いていた「紅組司会」「白組司会」「総合司会」という役割分担が、この年初めて撤廃されました。俳優の大泉洋、女優の川口春奈、そして和久田麻由子アナウンサーの3名は、全員が一律で「紅白歌合戦2021司会」として登壇しました。
性別によってチームを背負わせる構造を改め、番組全体をフラットに進行するスタイルへの変更は、「ダイバーシティ&インクルージョン」を打ち出した制作陣の強い意志の表れでした。川口春奈のナチュラルで落ち着いた進行と、大泉洋の軽妙なアドリブによるバランスは、視聴者からも「ギスギスした対決感がなく心地よい」と高い評価を得ました。
勝敗判定のデジタル化とMISIA大トリの歴史的意義
最終審査では、ゲスト審査員・会場審査員・視聴者審査員の投票が行われ、紅組が圧倒的な票数を獲得して勝利(紅組:2,189,150票 vs 白組:1,956,996票)。紅組の優勝旗授与が行われました。
大トリを務めたMISIAの歌唱中、藤井風がピアノ伴奏だけでなくコーラスでもステージを支える姿は、紅組・白組の境界を超えた「音楽そのものの力」を象徴する演出でした。従来の「勝ち負けを競う歌合戦」から「時代のアンセムを共に分かち合うフェス空間」へと、紅白の本質が変容した瞬間でした。