2016年11月、「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」などで外食産業に旋風を巻き起こした俺の株式会社が、新たな一手として仕掛けたのが「俺のBakery&Cafe 恵比寿」でした。恵比寿ガーデンプレイスという洗練された立地にオープンした同店は、連日1,000本以上の食パンを焼き上げ、焼き上がり時間に合わせて整理券が配られるほどの狂乱ぶりを見せていました。
しかし、同店は2022年4月17日をもって営業終了を迎えました。突如として下された幕引きの背景には、外食業界関係者が指摘する「3つの決定打」がありました。
第1の要因は、恵比寿ガーデンプレイス全体の大規模リニューアルと定期借家契約の満了です。サッポロ不動産開発が手掛ける同施設は、旧恵比寿三越の撤退に伴い、2022年秋に向けて「センタープラザ」の全面改装など大規模な商業導線の再編を進めていました。俺のベーカリーが入居していた時計広場周辺の区画も契約更新のタイミングを迎え、施設側のリブランディング方針と運営元の出店条件の折り合いがつかなかったことが、物理的な撤退の引き金となりました。
第2の要因は、高級食パン市場の成熟に伴う「都心型大型カフェ」の固定費負担です。同店は2階に開放感のある広々としたカフェスペース(32席)を備え、厚焼き玉子サンドやフレンチトーストを提供するフルサービス型で運営されていました。しかし、コロナ禍以降のテレワーク定着による恵比寿エリアの人流変化に加え、都心の好立地がゆえの高額な家賃と人件費が収益構造を圧迫するようになりました。
第3に、俺の株式会社による事業ポートフォリオの構造改革が挙げられます。公式発表資料および決算関連データからは、不採算店舗の整理と同時に、自社直営の公式オンラインショップ「俺のEC」の本格稼働へリソースを集中させる戦略転換が読み取れます。テイクアウトと重厚なカフェを併せ持つ大型店を維持するよりも、EC販売と銀座の旗艦店へ集約するほうが、ブランド全体の利益率を保てると経営陣が判断したことは明白です。