環境省が主導する最新の影響評価報告では、季節のズレがもたらす生態系と一次産業への打撃が極めて深刻なトーンで描かれている。桜の開花特性や昆虫の羽化、渡り鳥の飛来時期のタイミングが狂う「フェノロジーの不一致」が全国各地で観測されており、これが生態系ピラミッドの根底を崩し始めているのだ。
東京大学未来ビジョン研究センター教授の江守正多氏は、この事態を「気候危機の不可逆的な顕在化」と位置付ける。江守氏が指摘するように、気温が一定の閾値を超えると、生態系が自己回復力を失うティッピング・ポイント(不可逆的な転換点)を突破してしまうリスクが極めて高い。
特に農業現場の悲鳴は切実を極めている。米の高温障害による白未熟粒の多発や品質低下、果樹の着色不良や開花異常、日本近海の水温上昇に伴うサンマやサケの記録的不漁など、日本の「和食文化」を支えてきた基盤が根こそぎ揺らいでいる。秋の味覚とされてきた食材が市場から姿を消し、農家が長年培ってきた栽培暦が一切通用しなくなる日が、すぐそこまで迫っている。