原点を振り返れば、彼が率いたコレクティブ「Odd Future (OFWGKTA)」の混沌と初期衝動こそがすべての始まりだった。スケートボードカルチャーとDIY精神から生まれた剥き出しのサウンドは、年月を経て緻密なオーケストレーションと洗練されたコードプログレッションを纏うようになる。
『IGOR』で提示した痛烈な失恋劇と歪んだシンセサイザー、『CALL ME IF YOU GET LOST』で見せた豪華絢爛なミックステープカルチャーの再解釈、そして『CHROMAKOPIA』に至るまで、タイラー・ザ・クリエイターは一作ごとにペルソナを脱ぎ捨て、自らを再定義してきた。オルタナティブ・ヒップホップというカテゴリーすら彼にとっては窮屈な檻に過ぎない。生々しい感情の吐露と極上のポップセンスが同居する音作りは、同時代のプロデューサーたちを常に圧倒し続けている。