本作の最大の魅力は、ジャンルの枠にとらわれない重層的なストーリーテリングにある。眉月じゅんが提示するのは、単なる「懐かしさ」への礼賛ではない。昭和レトロを思わせる煙草の煙、ネオン管の光、蒸気立つ屋台料理の匂い。そうした魅惑的なビジュアルの影で、常に「偽物(ジェネリック)」の気配がつきまとう。
物語のジャンルを一言で表現するなら、SFディストピア・恋愛ミステリーという他ない。物語の舞台となる「九龍城砦」の上空には、謎の巨大人工建造物「ジェネリックテラ」が静かに浮遊している。過去と未来が奇妙に交錯するこの空間で、住人たちはどこか浮世離れした日常を享受しているのだ。