BEGINの代表曲『島人ぬ宝』を深く読み解くと、一般的なご当地ソングとは決定的に異なる構造に気づきます。1番では「空の星の数」、2番では「波の音や海の青さ」、そして3番では「古い言葉(方言)」について、歌い手は一貫して「教科書にも載っていないし、自分は何も知らない」と吐露している点です。
多くの地域振興ソングや郷土歌が「我が街の素晴らしさ」を誇らしげに列挙するのに対し、本作は「無知の自覚」から始まります。都会に出て音楽活動を続ける中で、「沖縄出身でありながら、自分は故郷の本当の文化や歴史をどれだけ知っているのだろうか」という、比嘉栄昇自身の痛切な引け目と自省が根底に流れています。
知っているふりをして美辞麗句を並べるのではなく、「知らないけれど、誰よりもこの島を大切に思っている」という純粋な想い。知識の有無ではなく、土地や人々への無条件の愛こそが「宝」であるという逆転のロジックが、聴く者の心を強く揺さぶるのです。