「トリートメントなのに髪が痛むわけがない」と考える読者は少なくありません。しかし実際には、髪質改善の施術を受けた後に髪が硬化したり、ビビり毛(過剰な熱や薬剤で縮れた状態)になったりする事例が現実に報告されています。取材によって判明した、失敗を引き起こす構造的な理由は主に以下の3点です。
第1の要因は、「酸熱トリートメント」における過度な熱処理と酸による過収縮です。酸熱トリートメントは、グリオキシル酸などの酸性成分を髪に浸透させ、仕上げに約180℃のヘアアイロンの熱を当てることで「イミノ結合」という強固な架橋を形成します。しかし、美容師の毛髪診断が甘く、ハイダメージ毛に対して酸濃度が高すぎたり、過剰なテンション(引っ張る力)と高熱を加えたりすると、タンパク質が熱変性を起こして硬くなり、毛先がバサバサになる現象が発生します。
第2の要因は、「くせ毛が伸びる」という期待値のズレです。髪質改善トリートメントはダメージによる広がりやパサつきを抑える「毛髪補修・治療」が本質であり、毛髪内部のシスチン結合を切り離して再結合させるわけではありません。そのため、生まれつきの強いうねりや縮毛に対して髪質改善を行っても、くせ毛そのものは伸びず、「高額なお金を払ったのに効果がなかった」という落胆につながります。
第3の要因は、美容業界における「髪質改善」という用語の定義の曖昧さにあります。現在、日本の美容業界において「髪質改善」という名称には明確な法規制や公的基準が存在しません。酸熱トリートメントを指すサロンもあれば、微量の還元剤を含んだコスメ系ストレートパーマを髪質改善と呼ぶ店、単なる高濃度トリートメントをそう名付ける店まで混在しており、顧客が施術内容を正しく把握できないままミスマッチが起きているのが実情です。