2026年3月に発表された珠城りょうの退団表明は、宝塚ファンのみならず演劇界全体に大きな衝撃を与えました。当時は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う公演中断が重なり、最終的なサヨナラ公演『桜嵐記(おうらんき)/Dream Chaser』の大千秋楽は2026年8月まで延期される異例の事態となりました。一部のネット上では「コロナ禍による早期幕引き」や「劇団との方針の相違」といった憶測が飛び交いましたが、実際の真相は全く異なるものでした。
退団発表記者会見において、珠城りょう本人は「トップスターに就任した当初から、自分の中で務める期間を約5年と定めていた」と明言しています。入団9年目(研9)という若さで頂点に立った彼女は、自身のエネルギーをすべて注ぎ込み、月組が次の世代へと円滑に移行するためのタイムリミットを最初から逆算して舞台に立ち続けていました。
劇団関係者や舞台制作スタッフの証言によると、彼女は常に「自分が組の壁になり、組子全員が伸び伸びと個性を発揮できる環境を作る」という利他の精神を貫いていました。後任のトップスターである月城かなとへの継承プロセスを見ても、月組の伝統と革新を完璧な形で引き継いだ極めて理想的な勇退であったことが窺えます。