今なおファンの間で語り草となっているのが、営業当時の圧倒的な展示クオリティです。吉幾三コレクションミュージアムは、単なるタレントショップの延長ではなく、日本歌謡界の激動期を駆け抜けた一人の天才音楽家の「汗と涙の記憶」を凝縮した本格的なアーカイブでした。
かつての館内における最大のハイライトは豪華絢爛なステージ衣装の数々でした。NHK紅白歌合戦をはじめとする大舞台で着用されたスパンコール煌めく特注スーツや、代表曲のイメージに合わせた着物、さらには代名詞でもあるド派手なステージジャケットがガラスケース越しにずらりと並び、その迫力は圧巻の一言でした。衣装の裾や刺繍の細部まで間近に観察でき、演歌・歌謡界の華やかさを肌で感じられる空間だったのです。
さらに見逃せなかったのが、音楽的才能の深淵を物語る一次資料の展示です。『雪國』『酒よ』、そして日本のヒップホップの先駆けとして再評価され続ける『俺ら東京さ行ぐだ』など、自ら作詞・作曲を手掛けた名曲の手書きコード進行表や直筆歌詞原稿が公開されていました。消しゴムで消された推敲の跡や、走り書きされた譜割りからは、単なるコミックソングの枠に収まらないシンガーソングライターとしての凄まじい執念が滲み出ており、多くの来館者を唸らせました。
館内の一角にはプライベートな趣味である「書画」や愛用のギター、少年時代から上京・下積み時代の苦闘を記録したモノクロ写真も展示されており、サービス精神旺盛な吉幾三の「人間味」に丸ごと浸ることができる、唯一無二の空間だったと言えます。